必ず準備したい!サロンを守るエステの免責同意書の作成方法

エステティックサロンを経営するうえで、サービスを提供する際の「免責同意書」や「契約書」はトラブル回避に欠かせない大切な書類です。しかし、個人エステサロンでは、開業時の忙しさに追われて、そうした書類を用意しないままスタートするところもあるようです。

たとえ、どんなに親しい間柄のお客様を中心に営業するつもりだったとしても、オーナーとしてはサロンを守り、将来的なリスクを軽減するため、事前に対策を行わなければいけません。サロン経営に欠かせない「免責同意書」や「契約書」の必要性、その作り方についてお伝えしましょう。

エステサロンにおけるリスクと免責同意書の必要性

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複雑で難しいイメージがある「免責同意書」や「契約書」ですが、事前に用意しておけば、万が一お客様との間にトラブルが発生した場合でも早期解決につながりやすいというメリットがあります。なかでも、免責事項とは何らかの問題が発生した際の責任について定める項目であり、クレームへの対応法も明確になります。

例えば、お客様の体調不良やアレルギーが原因と思われるクレームがあったとしましょう。事前にそうした状況をお客様から申告されず、さらに「体調に関する事項」や「施術の開始に関する事項」を盛り込んだ免責同意書にサインされているのであれば、必ずしもサロン側が責任を負う必要はありません。

一方で、「免責同意書」がなくトラブルが生じた場合、施術代をお返しし、治療費、診断書代、交通費といった賠償責任が生じる可能性があります。結果、多額の損失や対応に追われ、経営にも大きな影響を与えてしまうことにもなりかねません。備えあれば憂いなしと言いますが、長く安定したサロン経営を続けるためにも、必要な書類として早めに準備しておきましょう。

では次に、具体的に「免責同意書」に入れ込んでおきたい項目を確認してみましょう。

体調・施術の開始に関する事項

免責同意書には、既往歴や通院歴、化粧品によるかぶれの経験、来店時に飲酒や発熱、妊娠中でないことなどを確認する内容を入れ、リスクがある場合は施術を行わない旨を記載します。以下のような点を意識しながら項目を作成してみましょう。

・飲酒後……アルコールによる血管拡張とエステの相乗効果で心臓負担が増すことや、アルコールで感覚が鈍くなるため施術の強さがわからなくなってしまい、揉み返しなどがおこることが考えられます。

・発熱時……さらなる体調悪化の可能性があります。

・感染症……感染力の強い感染症にかかっている場合、お客様からスタッフ、さらに他のお客様への感染を広めてしまう可能性があります。「水虫」も感染症のひとつです。

・1ヵ月以内に予防接種を受けた場合……接種後数日以内は発熱や発疹などの反応が起こることがあります。予防接種の種類によっては、1ヵ月以内に高熱やひどい腫れなどの重い副反応が出ることがあるため、注意を促す必要があります。

・病気治療中……治療中の病気によっては、エステ施術が症状を悪化させたり、治癒を遅らせたりしてしまう可能性があります。治療後の経過観察期間には、「主治医からの許可」を確認したうえで、施術が可能です。

・アレルギーの有無……化粧品や飲食物のアレルギーについて、過去の経歴を含めて、具体的なアレルギー源や症状を把握する必要があります。回避できる場合にはできるだけアレルギー源とならないものを使用し、どうしてもアレルギー源が含まれる場合には施術を行わない旨を記載します。例えば、化粧品に含まれるアルコールアレルギーや、カモミールティに代表されるキク科アレルギーなどがあり、思わぬところで症状が出るかもしれません。申告がない場合も、かゆみや発疹が確認できるようなケースは要注意です。

・肌トラブルの有無……アトピー性皮膚炎や敏感肌など、「肌状態により施術をお断りする場合がある」旨を記載しておきます。

・妊娠中……子宮収縮を促す作用の成分を含むアロマをはじめとする化粧品や、マシンの使用による胎児への影響が懸念されます。妊娠中のお客様は一切お断りするという選択もありますが、リラックス目的のゆったりとしたオールハンドメニューであれば、安定期であることを条件に受け入れる場合もあるでしょう。その場合、「産婦人科医の許可」を確認する項目も追加しておきましょう。

契約に関する事項

契約者が未成年者のみの場合、親による契約取消が可能です。「必要がある場合にお客様の身分証明書提示をしていただく場合があります」という一文と「親の同意のもと契約する」旨を記載することで、契約不成立や代金未回収といったトラブルを防ぐことができます。

エステサロンの免責同意書に必要な項目

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ここで、まだ免責同意書やコース契約書の準備ができていないオーナーに向けて、書類の作成についてお伝えしましょう。まず理解しておきたいのが「特定商取引に関する法律(以下、特定商取引法)」に関する資料送付の必要性です。エステティックサロンでは、1ヵ月以上かつ50,000円を超える契約については、特定商取引法の遵守が義務付けられています。

特定商取引法の内容は以下の通りです。

1.契約をする際の書面交付(概要書面・エステティックサービス契約書)
2.誇大広告等の禁止、不実告知、威迫・困惑感等の行為の禁止
3.クーリング・オフ
4.中途解約制度、損害賠償額の制限 等

全日本全身美容業協同組合では、特定商取引法に基づき、契約をする前にその内容をお客様に説明して「概要書面」を交付すること、契約後は「エステティックサービス契約書」を交付することを呼びかけています。

契約書には必要記載事項があり、押印が必要です。事実に基づいた正確な契約内容、クーリング・オフや中途解約制度などの説明を盛り込み、サイン・押印欄を設けることが定められています。

記入例を参考に、必要な項目を確認しながら契約書・同意書を作成してみましょう。

「概要書面」の記入例

1.サービスの内容
部位と詳しい内容:フェイシャル(美顔・トリートメント)、ボディ(トリートメント)等

  • コースの全回数
  • 1回単価(税込)
  • コース総額(税込)
  • 1回あたりの施術時間
  • コース全部の施術時間
  • コースの開始から終了までの提供期間:〇年〇月〇日~〇年〇月〇日

2.関連商品

  • 商品名:フェイシャル用化粧品(化粧水・乳液・美容液)、ボディ用化粧品(オイル・クリーム)等
  • 種類:化粧品・サプリメント等
  • 数量および内容量:1本(100ml)・1個(50g)等
  • 単価(税込)
  • 合計金額(税込)

3.お支払い見込額

  • それぞれの金額(税込)
  • 支払総額(税込)

4.お支払方法・時期

5.契約の解除に関する事項

6.同意事項

  • 施術の開始に関する事項
  • 契約に関する事項
  • 体調に関する事項

「エステティックサービス契約書」の記入例

1.契約日・契約期限
2.ご契約者名・押印欄
3.サービスの内容(概要書面に準じる)
4.関連商品(概要書面に準じる)
5.支払方法・時期(概要書面に準じる)
6.キャンセル等についての特約事項
7.同意事項(概要書面に準じる)

  • 施術の開始に関する事項
  • 契約に関する事項
  • 体調に関する事項

8.会社名、サロン名、住所、電話番号、オーナーの氏名、契約の締結を担当したスタッフの氏名
9.クーリング・オフの説明
10.中途解約の説明
11.中途解約・関連商品に関しての返金時の計算方法

契約書面には、お客様が購入されるサービスや商品の内訳や金額を、丁寧にわかりやすく詳しく記載しましょう。クーリング・オフや中途解約の方法は特定商取引法に準じます。

エステサロンの免責同意書完成までのチェックポイント

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せっかく同意書や契約書を作成しても、不備があると、トラブル発生時に効力が認められないことがあります。有効な同意書に欠かせない3つのチェックポイントを見てみましょう。

1.特定商取引法に基づく記載義務事項、免責同意事項が書かれているか
2.記入欄の大きさ
3.記入漏れ

特定商取引法は、本来は消費者を守るための法律です。お客様にとって理解しやすい内容であること、必要な事項に気づきやすい表記が求められます。また、同意事項だけを記載しても効力はありません。必ず契約書とともに用意しましょう。

サービス内容については、ボディかフェイシャルか、美顔かトリートメントかなど、施術部位や施術コースの詳細まで記載します。施術単価や商品の内訳、金額に至るまで、誰が見てもわかる内容である必要があります。

クーリング・オフについても記載方法が定められています。具体的に「書面には書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載しなければいけない」「書面には日本工業規格Z8305に規定する8ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いなければいけない」とされています。

完成した契約書を回収する際は、記載内容に漏れがないか必ず確認しましょう。契約は、相手の承諾を得て初めて成立します。お客様にサービスを提供する前に、承諾の証拠となる「サイン」と、契約の効力が発生する大切な「日付」が明記されていることを確認しましょう。

見やすさはもちろん、同意をいただくサインのしやすさも考えながらレイアウトしておくと、お客様のサイン漏れや、スタッフのチェック漏れを防ぐことができます。一度書面が出来上がれば、あとは少しの作業で更新できます。定期的に見直す機会を設け、安心して契約していただける書類を作成しましょう。

今すぐ適切な同意書を準備してサロンを守ろう

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免責同意書はサロンとお客様を守るために欠かせません。安定したサロン経営を続けるためにも、必要事項を記載した免責同意書を準備しておきましょう。同意を得た書面についてはいつでも内容を確認できるよう文書管理も忘れずに行うことが必要です。

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